ささやかな力は未来を拓く力

京都YMCAの機関紙「京都青年」9月号掲載

公益社団法人 京都府視覚障害者協会 副会長
学校法人 京都YMCA学園 非常勤講師
松永 信也

「困っている視覚障がい者の人を見かけたら声をかけましょう。」というメッセージが最近多くなった。
昨年連続して発生してしまった視覚障がい者のホーム転落事故がきっかけとなったようだ。僕たち視覚障がい者にとってはとてもありがたい社会の動きだ。転落防護柵が各駅のホームに整備されるのが望ましいが、これには時間もかかるだろう。それに危険な場所はホームだけではないし、いろんな場所で迷子状態になっている日常がある。
「見えない」状態で社会に参加するとはそういうことなのだ。だからこそ、困った時に声をかけてくださる人が一人でも増えて欲しいといつも願っている。

京都YMCAボランティアビューロー専門委員会(VB委員会)の主催で視覚障がい者サポート講習会がスタートして、もう10年以上の歳月が流れたかもしれない。協力して知恵を出し合って実施してきたけれども、参加者は毎年そんなに多くない。1ケタの参加者数ということもあった。スタッフの方が多いということになる。現代社会での「効果」とか「効率」ということで測れば、決して優等生ではない。
僕は申し訳ない思いもあってVB委員に相談したことがった。答えは明快だった。「我々も数が多い方がありがたいのですが、たとえ参加者が少なくても、『0』でない限り成功です。継続することに意味があります。参加者の延べ人数は3ケタになりましたよ。」

少しずつでも、善意で繋がり前向きに支え合うネットワーク「ポジティブネット」を地道に広げていきたいという姿勢だった。実際、この講座を受講した人からサポートを受けた視覚障がい者の声を、僕は複数聞いている。「ちょこっとボランティア」と銘打ったこの企画はまさに10年後の今日を予言するような、さきがけの取り組みだったということになる。

この取り組みの過程で、VB委員会メンバーだけではなくてワイズメンズクラブのメンバーや京都YMCAの職員など多くの人と出会った。目が見えない僕と見える人達、年齢も職業も、時には性別も違う。同じなのは、この京都に縁があるということ、そして同じ未来を向いているということだろう。いつの間にか絆ができた。国籍が違っても性別が違っても言葉が違っても年齢が違っても障がいがあってもなくても、皆が笑顔で暮らせる未来を向いているということだろう。

まだまだ道のりは長い。人間同士が支え合うボランティア活動が、ますます重要になってくるのは間違いないだろう。
これまでの取り組みに感謝をしながら、僕自身も僕にできることをやり続けたいと思っている。