幻メニュー!?「ゲンキ・コーヒー」

(エッセイ by  Genki★)

2012年5月、私は京都の町家にいた。所属するNPOがその町家でカフェを開くということで準備に来ていたのだ。(所属するNPOとは、ブライト・ミッション。視覚障がい者と晴眼者の相互理解などを広めるために作られた団体である。私も視覚障がいを持っており、中心視野以外が欠けた状態である)。

店の中にはすでに人がいて机を並べたり厨房の掃除をしたりしていた。私も掃除を手伝ったりレジ打ちの練習をしたりした。カフェの名前は「町家カフェ・さわさわ」、オープンは7月7日と決まっていたので焦りながらやっていたのをおぼえている。

オープンしてから1カ月ほどは身内客でもっていたが、ドリンクメニューしかなく、来てくれたお客様が帰っていくこともあった。そんな中、以前喫茶店をやっていたKさんがカレーを作ってくれることになった。牛すじを使った濃厚なカレーで今ではさわさわの目玉メニューのひとつになっている。最近ではおぜんざいやゴマを練りこんだアイスもおいている。どれもおいしいので一度食べてみてほしい。

写真:げんきコーヒー看板さて、ここでタイトルにある「ゲンキ・コーヒー」の説明をしたいと思う。私は、さわさわには週に3日~4日出勤していた。「ゲンキ・コーヒー」(以下、「ゲンキ」)が何故幻メニューかというと、私がさわさわにいるときにしか出せないものだからである。豆も違う。普段使っているものはモカブレンドだが「ゲンキ」で使うのはオリジナルブレンドなのである。それを手動ミルで挽き、コーヒー好きの方に教えてもらった方法でたてる。看板を出した当初は、頼んでくださるお客様はいなく、身内で飲む程度のものだった。しかし来てくださるお客様が増え、次第に「ゲンキ」が出るようになってくると、ある感情が芽を出してきた。中でも一番大きかったのは失敗したときの恐怖だった。

お金をもらっているわけなので、まずいものを出すことはできない。そんなプレッシャーを感じながら最初のころは淹れていた。しかし。お客様の「あ、おいしい」という何気ない一言を聞き、恐怖が消えていった。その時から、お客様においしいと言ってもらえるように気持ちを込めて淹れようと思えるようになった。

今、私はさわさわには行っていない(幻メニューとはそういう意味でもあるのだ)。大阪にある日本ライトハウスで訓練を行っている。はじめは自分で決めたこととはいえ、一緒に働いてきた仲間に申し訳ないと思い、なかなか話せなかった。しかし、話してみると皆、やさしく温かく背中を押してくれる言葉をかけてくれ、激励会まで開いてくれた。1年間しか共に働いていないけれど、私が今こうして歩いて行けているのはさわさわの仲間のおかげだと思っている。心から感謝の言葉を送りたい。

次に書くのは「自然に優しく自分に厳しい」たけのりさんです。どんなことを書くのかお楽しみに!
写真:コーヒーを淹れる Genki★